八剱の家

築100年を超える木造民家のリノベーション。私の実家であるこの家に母と私たち家族が同居することに加えて、仕事場を確保することが前提であった。長い間増築や改装を施しながら住み継がれてきたこの家は、いつの頃か階高の低い二階は使われなくなったようで天井が貼られて平屋として住んでいた。一部物置になっていた小屋裏へ上がるとむき出しの力強い架構。土臭くて薄暗いその場所は小さい頃ひとりで寄りつけない場所であったが、今になりその静けさや陰影に魅力を感じた。そして何よりこの家を住み継ぐことは、住み慣れた母にとっても自然なことだと思えた。

耐震性を高めるために屋根瓦を下ろし、土壁も断熱材を入れた乾式の壁とし重量を大幅に軽減した。また部分的に減築をし、印象的な切妻屋根のシンプルな外観が現れた。内部は典型的な田の字型の間取りを整え、一階の天井を剥がし六メートルの高さまで視線を通した。こうして垂直方向にも水平方向にも広がるおおらかな空間がつくられた。

玄関からダイニングにつづく土間は今までの家のつくりと変わらず、訪ねてくる人にお茶でもどうぞと気軽に上がってもらえる距離感になっている。仕事場は通り側に位置していて木製建具は大きく開くつくりにしている。外部のオープンスペースも含めて設計事務所に留まらずコミュニケーションが生まれる場として育んでいこうと思っているからである。こうして更新されたすまいで、この地域の風土を私たちらしく継承していきたい。

 

© KOO DESIGN ASSOCIATES